| 第七回 たゆやかなもの
 | 
           
            |  |  | 
           
            | 兜 | その人が、世界の中心で愛を叫んだ男が死んだとして その人を語るとき、叫んだ話は、したくないですね
 | 
           
            | 熊田 | したくないねえ | 
           
            | 兜 | あいつ、あんとき叫んだんだよなあ〜って したくない
 | 
           
            | 熊田 | したくない、してるんだよそういう話を 映画も多分そういう話だとおもう
 | 
           
            | 兜 | 叫ぶ気持ちはわかんなくはないんだけど そういうふうにもなるだろうなあとは思うんだけども
 今のこの話からすると、絶対話したくない
 | 
           
            | 熊田 | どういうこと? | 
           
            | 兜 | 話の主人公の経験はわからなくもないけど ただ、そいつが死んでから、そんな話はしないなって、
 | 
           
            | 熊田 | しないな | 
           
            | 兜 | まあ、ちょっとした一つの通過した話なんだろうなって、 それよりも、そいつを表す話ってのは違うところにあるなって、
 | 
           
            | 熊田 | だって、実際そいつが、すごい恋愛したっていう最中は、 まあ、間接的に会ってね、ああ、こいつうまく
 いってるんだなとかそういうのは感じるかもしれないけど、
 実際そいつらがいちゃいちゃしているのを見ているわけ
 じゃないじゃない、そいつが恋愛を終わって、ばあっーと
 いわれても、おもしろくもなんともない
 | 
           
            | 兜 | なんも、おもしろくない | 
           
            | 熊田 | そんなの、おれらしらねえ、おまえだけの話だろって、 それが、大きく普遍させて、人の体験を、恋愛でも小説でも
 映画でもなんでも、あんなん人のことでしょ、だって 。
 ああ、わたしもこういうことあるっていうレベルの話でしょ
 | 
           
            | 兜 | ふふふふ(笑)・・・そうだねえ、・・・そこはどうかな、まあ・・・ | 
           
            | 熊田 | だから、、、 | 
           
            | 兜 | 少女漫画でもなんでも、そこの主人公になるってことですよね結局、まあ、
 | 
           
            | 熊田 | うん、そう | 
           
            | 兜 | それが共感 | 
           
            | 熊田 | 共感?共感ねえ・・・・ | 
           
            | 兜 | 人の話なんだけど、自分の話にしちゃうっていう | 
           
            | 熊田 | ああ、わたしもわかるっていう・・・・ | 
           
            |  |  | 
           
            | 兜 | ふふふ(笑)、嫌いっぽいですね | 
           
            | 熊田 | ははは(笑)、なんかねえ・・・リアルじゃないんですよ | 
           
            | 兜 | ああ、そういうことですか | 
           
            | 熊田 | 共感させるやつ?、、共感させるんじゃなくて、 | 
           
            | 兜 | あれですね、こういうこといっちゃなんだけど、 一つ次元の上の話ですよね、
 そこで共感とは違うんだよっていう目ってのは
 ある意味、うん・・・、こういう言葉好きじゃないな・・・
 高尚?高尚・・違うな、難しいなあ・・・・
 | 
           
            | 熊田 | まあ、いっていることはわかります | 
           
            | 兜 | わかりますよね | 
           
            | 熊田 | そうですかね・・・・ | 
           
            | 兜 | そこの目を獲得することは難しいと思いますよ | 
           
            | 熊田 | 難しいですかね | 
           
            | 兜 | すごく、難しいですよ、熊田さんがどういう視点で 見てるのかは、なんとなくわかるんですよ、
 だけど、一般的には、すごく難しいと思う
 | 
           
            | 熊田 | うん、うん | 
           
            | 兜 | 難しいっていうか、また時代のせいにするけど例えるとするなら、職人だとか、今いないけど
 インディアンの酋長とか、なんてんだ、ものすごく
 いい生き方をしてきた人達の顔だとか手だとかを、
 それを賞賛する文化ってないじゃないですか、
 | 
           
            | 熊田 | ないですねえ | 
           
            | 兜 | 多分、熊田さんの話って、そっち側の話 だと思うんですよ
 | 
           
            | 熊田 | うん、うん、うん、 | 
           
            | 兜 | そこから見たときに、恋愛の話なんて若さの話、出会いの、特権みたいなことで
 大きな人間の経験のスパンからいうと
 ごく一部の話であって、もっと滋味豊かな話が
 この大地にはブワッーとある。
 だけど、今の時代の人ってのは、環境として
 ここらへんの位の範囲でしか生きてないし、
 しかも、その大きさを気づかせるような装置も
 仕組みもないですよね
 | 
           
            | 熊田 | ないですね | 
           
            | 兜 | もっと、そういう大きなところの文化ってのは 昔あったと思うんですよ、
 そういうところを尊ぶってことが、すごくなくなった・・・・
 | 
           
            | 熊田 | ないですね | 
           
            | 兜 | 水木しげるとか大好きなんですよ、 | 
           
            | 熊田 | ああ、いいですね水木しげる | 
           
            | 兜 | あの人はすばらしい、人間としてなんか | 
           
            | 熊田 | いいですね | 
           
            | 兜 | 水木しげるは、愛って言葉使いたがらないんですよ | 
           
            | 熊田 | へえ、 | 
           
            | 兜 | 愛なんか別にねえ、って 愛なんか、ねえんじゃないかな?って
 | 
           
            | 熊田 | はは(笑)、いいね | 
           
            | 兜 | でも、一般的に言われる愛なんてものが 形としてあるとしたら、水木しげるはそういうのが
 ものすごくたくさんある人だと思うんですよ
 | 
           
            | 熊田 | と、思いますよ | 
           
            | 兜 | ただ、言葉にすると変になっちゃうから。 ああゆう人をすばらしいっていう文化っていうかなあ
 | 
           
            | 熊田 | ないですね、それを需要する、こちらの、なんてのかなあ・・・、がないですよね
 | 
           
            | 兜 | おれは、恋愛の話もあっていいと思うけど、 そのなんかね、大きなたゆやかなものってのを
 大事にしたい
 | 
           
            | 熊田 | 一部ですよ、恋愛なんて | 
           
            |  | (つづく) |